女性の不妊症にも乳酸菌ラクトバチルス発酵食品
不妊症は、ここ数十年で日本だけではなく、世界中で増加しており、多くの方が悩む社会現象の一つとなっています。
不妊症の病因はさまざまですが、多くの研究により、微生物学的要因がその大きな一因となっていることがわかっているようです。
膣微生物叢のアンバランスによる腸内毒素症は女性の不妊症と関連しているとの報告も話題になってきているように思います。
最近では、発酵食品に含まれる乳酸菌ラクトバチルス属を使用したプロバイオティクスによる治療が行われ始めています。
・不妊症とは
始めに不妊症の定義を確認しておきたいと思います。
世界保健機関および日本産科婦人科学会によると、不妊とは、妊娠を望む男女が自然な状態で12ヶ月以上にわたって妊娠に至れない状態を指すと定義されています。
妊娠希望にもかかわらず不妊のカップルは約10組に1組と言われていますが、近年は妊娠を考えはじめる年齢が上昇していることもあり、この割合はもっと高いとも言われています。
女性側の主な原因としては、排卵、卵管、頸管、子宮などが安定していなかったり、詰まっていたりということが挙げられます。
・腸内毒素症とは
腸内細菌叢(腸内フローラ)は、食事、摂取した薬物、腸の粘膜の具合、免疫系、微生物叢自体などの要因が絡み合った上でバランスをとっています。
上記の要因に酸化ストレス、細菌毒素などが加わったりすることにより腸内微生物群間の急速な変化を引き起こし、バランスが崩れて特定の細菌分類群のみが急増するなどすることにより、腸内毒素症の状態に悪化する可能性があります。
腸内毒素症により、炎症性腸疾患を含む多くの疾患だけでなく、肥満や2型糖尿病などの代謝障害などを引き起こす可能性があります。
さらに近年では、腸内毒素症が不妊をも引き起こす可能性があることがわかってきています。
・不妊症とマイクロバイオーム
現在では生殖管を含むほぼすべての人体に微生物叢が存在することが明らかになっています。
これは、生きた微生物の集合のことであり、マイクロバイオームと呼ばれています。
微生物叢は、全身の健康状態の維持と密接にかかわっています。
女性の膣内にも生殖微生物叢が存在し、これが不妊症に影響を与えることが示されています。
・不妊治療とラクトバチルス
膣内の生殖微生物叢は、妊娠との大きなかかわりがあります。
ラクトバチルスは、膣内の胚の着床や妊娠ケアなどの生殖補助医療(不妊治療)の成功に重要な役割を果たす可能性があります。
微生物叢の生殖性腸内毒素症は、ラクトバチルス属の典型的な種を使用したプロバイオティクスによって治療され始めています。
特に、膣のマイクロバイオームの調整による不妊治療の研究では、胚の移植時に移植カテーテルの先端にラクトバチルス・クリスパタスを定着させると、着床率と出生率が増加し、感染率が低下する可能性があるということが示唆されています。
まとめ
多くの人を悩ませる不妊問題ですが、その背景には腸内細菌叢のバランスの悪化による腸内毒素症もかかわっている場合があることがわかりました。
乳酸菌ラクトバチルスは、腸内毒素症の治療にも役立つ可能性があり、さらに膣の生きた微生物群を調整して認しやすい状態にするための不妊治療法としても用いられ始めています。
改めて、腸内環境を良好に保つことの大切さがわかります。
日ごろから、乳酸菌を含む発酵食品や食物繊維などの腸内細菌がよろこぶ食事を意識して摂る、抗生物質などの薬物には注意を払う、良質な睡眠をとってストレスをためない、など腸内環境を整える生活を目指すことで、妊娠しやすい体にアプローチすることができるかもしれません。
http://www.jsog.or.jp/modules/diseases/index.php?content_id=15
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28352996/
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https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%BE%AE%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%8F%A2