PTSDなどの不安障害にはプロバイオティクスなど食事の変更が役立つ?
誰でも大なり小なり不安を感じているものですが、世界の人々の約4%が不安障害を抱えて生活していると言われています。
そんな中、新しい研究では、腸内微生物叢内の特定の微生物が不安に関連する脳の活動の調整に役立つことを特定しました。
腸内環境を整えることが、不安を軽減することにつながるのでしょうか?
腸と脳の関連や食事について探ります。
不安障害とは
不安障害とは、強い不安や恐怖を感じる症状が続き、日常生活に支障をきたす状態を指します。
不安障害にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特徴があります。
主な種類としては以下のものがあります。
-全般性不安障害
特に理由もわからないまま、対象のない持続的な不安を特徴とする状態。
-パニック障害
突然の強い恐怖や不安により、動悸、混乱、めまい、吐き気、呼吸困難に襲われ、その後も発作が再発することを恐れる状態。
-広場恐怖症
特定の場所や状況における不安で、恐怖によりパニック発作が誘発されることもある。
-社交不安障害
人前で話すといった特定の状況や、社会的交流に対する強い不安を感じ、回避行動をとる状態。赤面、発汗、会話困難といった身体症状の特徴がある。
-強迫性障害
持続する考えに追われる強迫観念や特定の行為や儀式を行う強迫行為の特徴のある不安障害の種類。
-心的外傷後ストレス障害(PTSD)
外傷体験などの過去のトラウマ体験が原因で、不安やフラッシュバックを繰り返す状態。
不安障害の原因はさまざまで、遺伝的要因、脳の化学的不均衡、環境ストレス、過去のトラウマなどが関与することがあります。
こうした不安障害の治療法としては、一般的に会話療法、認知行動療法や薬物療法が用いられているようです。
細菌の減少は不安の増加につながる
不安を抱えるすべての人が薬物療法などの治療によく反応するわけではありません。
過去の研究では、不安の治療を受けた人の60~85%しかその治療に反応しないことが示されているようです。
しかし最近の研究によると、不安に関連する脳の活動を制御するのに役立つ腸内微生物叢が見つかったようです。
この研究では、腸内細菌叢を除去した無菌マウスのモデルを使用して、腸内細菌と不安の潜在的な関連性を調べたそうです。
その結果、無菌マウスが不安の増加の兆候を示したのだそうです。
この研究を通じて、不安が脳の基底外側扁桃体と呼ばれる特定の領域の活動の増加に関連していることがわかりました。
基底外側扁桃体は、特に恐怖や不安などの感情の感じ方を制御するのに役立つ脳の部分で、脳の警報システムのように機能する領域です。
また、研究では不安に対する食事療法にもまた注目が集まっているようです。
確かに、薬物療法や心理療法などの治療法はありますが、薬物療法には潜在的な副作用があり、対話療法は費用がかかり、それぞれ時間がかかる可能性があるそうです。
それに対して不安を軽減するための食事療法を開発することで、コストが削減され、薬の副作用のリスクがなくなる可能性があると見られているようです。
不安に対する腸-脳-マイクロバイオーム軸の重要性
今特に注目が集まっているのが腸-脳軸です。
医師たちは腸-脳軸について以前から認識していましたが、近年では、腸-脳-マイクロバイオーム軸にまで拡張されて考えられているそうです。
脳で起こることは何でも腸に変化をもたらし、腸の変化はマイクロバイオームに変化をもたらすことがわかっているようです。
その逆もまた同じで、マイクロバイオームの変化は腸に変化をもたらし、それが脳に変化をもたらすこともわかっています。
不安障害は、すぐに完治する状態ではない場合が多いようです。
このような長期的な問題を薬で治療するのはコストの面でも、副作用の面でもできるだけ避けたいところです。
不安を治療する新しい方法として食事を変更することは、誰でも簡単にできる方法の一つです。
食生活の変更など、腸内の微生物叢を変えることができるものは、非常に重要と言えます。
腸内の微生物叢を改善するための食事療法や食生活の変更には、いくつかの効果的な方法があります。
例えば次のようなことを試してみてはいかがでしょうか。
–プロバイオティクスを摂取する
プロバイオティクスとは、腸内の有益な細菌です。
ヨーグルト、ケフィア、キムチ、ザワークラウト、テンペなどの発酵食品に多く含まれています。。
-プレバイオティクスを摂取する
プレバイオティクスは、プロバイオティクスの「えさ」として機能する成分です。
玉ねぎ、ニンニク、バナナ、リンゴなどに含まれています。
–食物繊維を増やす
全粒穀物、果物、野菜、豆類などの高繊維食品を摂取することで、腸内フローラの多様性を高めることができます。
-加工食品を避ける
加工食品や高脂肪・高糖質の食品は腸内フローラに悪影響を及ぼすことがあります。
-水分を十分に摂る
十分な水分補給も腸内環境の改善に役立ちます。
-体を動かす
定期的な運動や散歩は、腸内環境を整える意味でも、気分転換の意味でも非常に重要と考えられます。
特に日光を浴びながらの散歩は、幸せホルモンとも呼ばれる体内のセロトニンの分泌を増やし夜の眠りにつきやすくする手助けもしてくれます。
少なくとも、軽度の不安や軽度のうつ病に悩まれているケースでは、まずはこうした食事療法や食生活の変更を行ってみてはいかがでしょうか。
必ずしも効果がすぐに出るわけではないかもしれませんが、試してみる価値はあるのではないでしょうか。
関連する記事:
腸脳軸は腸と脳のコミュニケーション経路
子供の自閉症スペクトラム障害(ASD)共通点や脳と腸の関連性のプロバイオティクス
脳と腸の共通点とマイクロバイオーム
お問い合わせはこちらから
受付時間 am9:00-pm5:00/土・日・祝日除く
引用文献:
Could probiotics help reduce anxiety?
Probiotic, prebiotic, synbiotic and fermented food supplementation in psychiatric disorders: A systematic review of clinical trials
Wikipedia