脳と腸の相互作用にも関わる過敏性腸症候群 (IBS) への対処法
機能性消化管疾患である過敏性腸症候群 (IBS) は、筋肉の収縮により腹部の不快感、ガス、腹痛を伴う下痢、便秘などを繰り返し引き起こすようです。
IBSは、脳と腸の相互作用の問題に関連していることもあるようです。
現在のところこれといった治療法のないIBSですが、いくつかの対処法はあるようです。
IBSの危険因子や軽減するのに役立つ方法を探ります。
IBSの危険因子
専門家によると、IBSを引き起こす可能性のあるいくつかの危険因子があるようです。
以下の状況は、I特に注意が必要かもしれません。
-幼少期に、身体的虐待や性的虐待など、ストレスやトラウマを経験したことがある
-うつ病、不安症、身体症状性障害などの精神的な健康障害がある
-消化管の細菌感染症
-小腸細菌異常増殖 (SIBO)
-食物不耐症または食物過敏症
治療法は確立されていませんが、生活習慣の調整、プロバイオティクスの摂取、メンタルヘルス療法、食事の変更などを推奨することで、IBSの症状を軽減することができる可能性があります。
IBSの症状に対処し軽減するのに役立つ治療法を、次から詳しく見ていきたいと思います。
1.食生活の変更
過敏性腸症候群の不快な症状の引き金となるのは食品であることも報告されています。
症状の原因となる可能性のある食品を特定し、食事内容を変更することで、IBS症状を軽減できる可能性があります。
米国の国際胃腸障害財団は、IBSを引き起こす可能性が高い食品として、不溶性繊維、チョコレート、カフェイン、ナッツを強調しているようです。
また、医師は、IBS患者に対して、小麦、大麦、ライ麦に含まれるタンパク質であるグルテンを含む食品を避けるよう勧めることもあるようです。
IBS患者の中には、セリアック病ではないにもかかわらず、グルテンを摂取した後に症状が悪化する人もいます。 これをグルテン不耐症といいます。
そのため、不溶性繊維、チョコレート、カフェイン、ナッツに加えてグルテンを食事から取り除くことから試されると良いかもしれません。
食事日記を数週間続けると、IBS 患者が症状を改善または悪化させる食品を特定するのに役立ちます。
特定の食品がIBS症状を引き起こしている可能性がある場合は、少なくとも12週間食事からその食品を取り除くことが推奨されているようです。
一方で、おすすめの食べ物もあります。
-繊維
繊維は便を柔らかくし、排出しやすくするため、繊維の摂取量を増やすと、IBSに起因する便秘の症状が改善される可能性があります。
食物繊維には水溶性と不溶性の2種類があります。 可溶性繊維は豆、果物、大麦、オオバコなどに含まれており、不溶性繊維は、全粒粉食品や野菜を中心に含まれています。
不溶性繊維は、かえってIBSの症状を悪化させる可能性もあるため、症状を軽減するには不溶性繊維よりも可溶性繊維の方が役立つと考えられているようです。
-低FODMAP食
FODMAPとは、発酵性オリゴ糖、二糖、単糖、ポリオールの略です。
これらはすべて小腸で吸収されにくい炭水化物です。
FODMAPには、5つのグループがあります。
-小麦、ライ麦、玉ねぎ、ブロッコリー、ニンニクに含まれるフルクタン
-ひよこ豆、レンズ豆、大豆製品、インゲン豆に含まれるガラクトオリゴ糖
-牛乳、アイスクリーム、ヨーグルト、カッテージチーズに含まれる乳糖
-リンゴ、マンゴー、ナシ、スイカ、ハチミツなどに含まれる過剰なフルクトース
-ネクタリン、桃、プラム、カリフラワー、キノコに含まれるポリオール
研究者は、FODMAPが小腸内の水分を増加させるため、IBSで発生する可能性のある軟便や下痢の一因となる可能性があると示唆しています。
さらに、FODMAPが大腸に到達すると、そこで数十億の細菌が FODMAPを発酵させ、ガス、腹痛、膨満感を引き起こします。
FODMAP摂取量を減らすと、これらの症状が改善される可能性があります。
-プロバイオティクス
いくつかの研究では、プロバイオティクスがIBSの症状に役立つ可能性があることが示唆されています。
ただし、すべてのプロバイオティクスに同じ効果があるわけではなく、現在も研究が進められています。
また、プロバイオティクスが何由来でどのようにつくられているか、他の成分に何が含まれるかなどによっても働きや身体への影響は違ってくることが考えらえます。
2. 身体活動を増やす
運動は、腸の収縮を刺激し、ストレスを軽減するのに役立ち、IBS がある程度緩和される可能性があります。
一日のうちで座って衣類時間が多いというIBSの女性109人を対象とした2018年の研究では、低強度から中強度の有酸素運動トレーニングにより、IBSの症状が改善されることが判明したそうです。
特に激しい運動をする必要はなく、身体活動の頻度と時間をゆっくりと増やすことが良いようです。
米国心臓協会は、週に5回、30分以上の運動をするという目標を提案しています。
3. ストレスを軽減する
生活の大きな変化などのストレス要因は、脳と消化器系の間の複雑な相互作用に障害を引き起こす場合があるようです。
それによって、IBS の症状を悪化させる可能性があります。
痛みは感情とのかかわりも大きいため、リラクゼーション、マインドフルネスなどのストレス軽減法も、IBS の不快な症状を持つ人々の生活の質を向上させるのに役立つ可能性があります。
マインドフルネスを実践すると、過敏性腸症候群やその他の慢性的な痛みを持つ人が、ストレスを感じたり、それが何を意味するのかを心配したりすることなく、現在起こっている感覚に気づくことができます。
これは身体的、精神的な健康を増進するのに役立つ可能性があります。
また、十分な睡眠(リカバリータイム)を取ることも、ストレスを軽減するのに役立ちます。
焦らずにゆっくりとIBSを治療していく気持ちを持つこともまた、治療につながるのかもしれません。
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