炎症や腸内細菌が自閉症スペクトラム障害に与える影響
自閉症スペクトラム障害 (ASD) は、多くの子供に影響を与え、その数は世界的にも年々増え続けているようです。
多くの調査で共通する報告では、自閉症スペクトラム障害に悩まされる子供の多くは、胃腸の症状を持っていることが少なくありません。
自閉症、炎症や免疫、胃腸の問題、そして腸内細菌の関係性から健康のヒントを探ります。
自閉症スペクトラム障害と胃腸の問題
自閉症スペクトラム障害は、社交の難しさを特徴とし、反復行動を伴う神経発達障害の一種です。
自閉症は個人によって異なるため、専門家により「スペクトラム」という用語が使用されるようになったそうです。
「スペクトラム」という用語には、「幅広い症状、スキル、および機能障害のレベル」というような意味が含まれていると言われています。
自閉症の症状は個人によって異なるため、専門家は「スペクトル」という用語を使用ししたとされています。
自閉症は年々増え続けており、研究も重ねられていますが、それにもかかわらず原因はまだ完全には理解されていません。
ただし、近年明らかになったことがあります。それは、胃腸と自閉症との関連です。
自閉症スペクトラム障害を持つ子供の多くが、胃腸の症状を持っていることがわかっています。
ある研究では、自閉症スペクトラム障害を持つ子供は、腹部膨満、便秘、下痢などの胃腸症状を報告する可能性が通常の6~8倍ほど高かったようです。
また他の研究では、消化器系の問題に悩まされている自閉症スペクトラム障害の子供は、より深刻な自閉症スペクトラム障害の症状を示す可能性が高いことが示されているようです。
また、胃腸症状を治療することで、自閉症スペクトラム障害の症状を軽減できる可能性があることも明らかになっています。
腸と自閉症スペクトラム障害の行動は、何らかの形で結びついているようです。
腸と免疫システム
3歳から12歳までの 103 人の子供を対象に調べられた研究をご紹介します。
子供たちは、下記の4つのグループに分けられました。
1.自閉症スペクトラム障害と胃腸の問題を持つ子供
2.自閉症スペクトラム障害を持っているが胃腸に問題のない子供
3.自閉症ではないが胃腸障害を持つ子供
4.自閉症でなく、胃腸障害もない子供
この子供たちを対象に、免疫反応と腸内細菌の両方を調べるため、血液と便のサンプルが分析されました。
その結果、1グループの子供たちに、他の3つのグループと比較して明らかな違いが見つかりました。
それは、炎症を促進するシグナル伝達分子である炎症性サイトカインのレベルが高かったということだったようです。
つまり、自閉症の子供で胃腸系のトラブルも抱えている子供の場合、免疫系が低下し、炎症の危険にさらされていることがわかったようです。
さらに以前の研究では、自閉症スペクトラム障害の子供は腸が腸漏れ状態で知られる「リーキーガット症候群」であることが示されています。
つまり、毒素や消化されていない食べ物が腸から血流に流れ込む可能性があるということです。
自閉症と腸内微生物叢
このように、して、自閉症スペクトラムと腸内細菌に密接な関係があることがわかりました。
これを受けて、アメリカのアリゾナ州立大学の科学者たちは、新しい形の治療法である「微生物叢移入療法」が自閉症児の胃腸の問題を解決するのに役立つかどうかを調査するようになったようです。
この方法は、健康な人の糞便を収集、処理、凍結し、治療を受けている人に投与するようです。
この結果、治療を受けた子供たちには、自閉症の子供たちに足りていないとされるビフィズス菌やプレボテラ菌の増加など、腸内細菌の多様性がみられたようです。
そして2年後に再度腸内の細菌の多様性を測定したところ、さらに多くの腸内細菌の多様性がみられたようです。
子どもたちの胃腸の問題に関連する症状が58%減少したそうです。
そして、この研究に参加した子供たちは、言語、社会的相互作用、行動に関連する測定値が45%改善されたとの報告が上がってきているようです。
これらのことから、自閉症の子供の腸内環境を整えることには大きな意味があることがわかります。
上記のような大規模な治療法はなかなかとることは難しいかと思いますが、普段から、プロバイオティクスを沢山補給して、腸内細菌に多様性を持たせることが大切なようです。
食べ物や食事では、ヨーグルトやキムチなどの発酵食品や、食物繊維を沢山取り入れて、少しずつ腸内環境を整えることで、症状の改善につながるかもしれません。
また、外で過ごす時間を増やし、土や土壌など自然界に触れたりすることも腸内細菌に影響を及ぼす意味でも大切で、おすすめといえます。
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引用文献:
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