人間の腸内微生物叢と世界の地域特性から見るオリゴ糖の重要性
ご存じのとおり、人間の腸には何兆もの腸内細菌が棲みついています。
これらの腸内細菌について国際的に研究され、考察された研究報告があります。
地域性とその地域での健康問題、腸内細菌などの関係性がわかり大変興味深い内容のため、その一部をご紹介したいと思います。
今回は、人間の腸内微生物叢と世界の地域特性から見るオリゴ糖の重要性についての報告から健康に活かすヒントを探ります。
アフリカ地方
アフリカの研究では、腸内微生物叢の乱れが貧困地域の慢性的な栄養失調と成長不全を悪化させる可能性があることを示唆する結果となっています。
アフリカでもっとも懸念される健康上の課題である栄養失調は、「微生物叢依存性」とみなされています。
特に、アフリカにおけるヒトのマイクロバイオームと栄養に関する研究は、小児期の栄養不足に焦点が絞られているようです。
栄養失調は、小児死亡率の45%を占める重大な問題となっています。
栄養失調は、腸内微生物叢による嚥下障害、代謝性、免疫性および腸のバリア機能障害、微量栄養素の欠乏など様々な要素からの不十分な栄養から生じる障害です。
さらに、それらは腸内病原性およびHIV感染、腸症、下痢、および慢性炎症によって、ますます悪化する場合があります。
母乳は、乳児の正常な成長と発達に必要な栄養素の供給源です。
母乳にはミルクオリゴ糖などのプロバイオティクスやプレバイオティクスが含まれており、小児期の栄養失調に対する微生物叢を整えるための治療薬として考えられています。
子供がひどい発育不全に陥った母親の母乳は、乳児が健康な成長を遂げた母親からのものと比較して、ヒトミルクオリゴ糖のレベルが低かったため、乳児の成長と関連していることが判明しましたた。
オリゴ糖は、腸内細菌の機能の増強、感染からの保護、および免疫応答の強化に関わる腸内微生物叢に対する有益な栄養素の一つであるため、乳児の健康な成長にはなくてはならないものということがわかります。
アメリカ
アメリカにおいては肥満および2型糖尿病患者の腫脹集団におけるマイクロバイオームの役割について、また、人種や民族性等が微生物の多様性および代謝に及ぼす影響について考察されています。
先進国では肥満やメタボリックシンドロームが健康上の重要な課題となっています。
先進国における研究では、体重を管理し、代謝の健康を改善するための実行可能な戦略として、腸内微生物叢の調節に焦点を当てています。
その結果、プレバイオティクスやプロバイオティクス(生きている微生物)の食物源として作用するオリゴおよび多糖類は、肥満を管理し、代謝の健康を改善するために腸内微生物叢を調節する有効な手段ということが示唆されています。
また、アメリカには多様な人種や民族が暮らしています。
研究者は、カナダに住んでいる173人の白人の乳児と182人の南アジア系の子孫の182人の糞便サンプルを分析に使用しました。
その結果、乳児の腸内微生物叢が人種や民族性、年齢、体重増加、および母乳育児によって影響されることが実証されました。
生後数年の消化管内微生物叢の発達は、免疫機能、栄養代謝、病原体からの保護にとって重要であることが確認されています。
特に、母乳が乳児の腸内微生物叢に影響を与えることを示唆しています。
まとめ
アフリカとアメリカという全く異なる地域での研究結果は大変興味深いものです。
栄養失調、感染からの保護、メタボリックシンドロームなど、健康上の課題は様々ですが、いずれの場合も母乳に含まれるオリゴ糖が重要な役割を果たすことがわかりました。
アジアとヨーロッパについての報告も、別の記事でお伝えさせていただきたいと思います。
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引用文献:
Diet and the Human Gut Microbiome: An International Review