梅毒感染症とヤリッシュ・ヘルクスハイマー反応
「ヘルクスハイマー反応」をご存じでしょうか?
ヤリッシュ・ヘルクスハイマー反応とは、梅毒や回帰熱などの患者に対して水銀化合物や抗生物質などによる治療を行った後に患者に起こる症状のことです。
あまり耳慣れない方が多いかと思いますが、今回は「ヤリッシュ・ヘルクスハイマー反応」について調べたことをお伝えしたいと思います。
ヤリッシュ・ヘルクスハイマー反応とは
ヤリッシュ・ヘルクスハイマー反応は、ある特定の疾患に対して抗生物質治療などを受けた患者に起こり得る一過性の臨床現象です。
具体的には、梅毒、レプトスピラ症、ライム病、回帰熱を含むスピロヘータ感染症に対する抗生物質療法から24時間以内に反応が起こります。
通常、発熱、悪寒、吐き気や嘔吐、頭痛、頻脈、低血圧、過呼吸、紅潮、筋痛、皮膚病変の悪化などとして現れます。
1800年代後半にオーストリアの皮膚科医だったアドルフ・ヤリッシュ医師が、治療後の患者の皮膚病変の悪化に気づいたによって文献に最初に記載されたことが起因になっているようです。
また、1900年代初期には、ドイツの皮膚科医だったカール・ヘルクスハイマー医師によって同様の現象が報告されました。
これらの人名から、「ヤリッシュ・ヘルクスハイマー反応」という呼び名が付いたと報告されています。
通常は、抗生物質などの薬剤を投与後1~4時間前後から反応が始まり、24時間で軽快するとされています。
この間、病原の細菌が大量に死滅され、細菌の毒素が血液に混入する事が発熱等の反応の原因と見られています。
ヤリッシュ・ヘルクスハイマー反応は急性かつ一過性の反応であり、生命にかかわる可能性のあるアレルギー反応や敗血症とは区別することが重要とされています。
スピロヘータ感染症とは
スピロヘータは、らせん状の形態をした細菌のグループの一つです。
他の細菌と異なる点は、菌体の外側にエンベロープと呼ばれる被膜構造を持ち、それが細胞体を覆っている点です。
菌体をくねらせたり、コルク抜きのように回転しながら活発に運動するその独自の形態は、構造生物学者の注目を集めています。
自然環境ではよく見られる常在菌の一種ですが、一部のスピロヘータはヒトに対して病原性を持つものがあり、梅毒、回帰熱、ライム病などがこれに該当します。
スピロヘータは以前は、細菌とは異なる別の微生物として考えられていたようですが、その後、研究が進むにつれて細菌の一グループとされました。
それほど、特殊な形態を持つ細菌ということで、抗生物質投与後の毒素排出により体調に不調をきたすのもわかる気がします。
梅毒感染症は恐ろしい?
スピロヘータ感染症の一つである梅毒は、コロンブス交換でヨーロッパへ持ち込まれ、以後、世界に蔓延したとする説が有力なようです。
梅毒は性感染症の1つとして数えられるものの、母子感染の場合もあり、その場合は先天性梅毒と呼ばれます。
症状の発現当初は皮膚症状が主な症状となりますが、通院して治療しない限り自然に完治することはないとされています。
恐ろしいことに、自然完治と思われるような潜伏期を3度挟みながら、どんどん病状が悪化していき、最終的に死に至ります。
予防に有効なワクチンは存在せず、ペニシリン系の抗菌薬の投与意外に治癒の方法はないようです。また、一度かかっても免疫は獲得できないそうです。
現在、梅毒患者は世界的にも、また日本でも急激に増えてきているようです。
ただの感染症と思わず、死に至る恐ろしい感染症ということを理解することが感染を防ぐ第一歩かもしれません。
気になる場合は、一度専門家に診ていただくことがおすすめです。
参考文献
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32491752/
https://tinyurl.com/3zkwd6js
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32260454/
https://tinyurl.com/3wpy2edf
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A2%85%E6%AF%92