グローバル感染症の注意と予防
グローバルな感染症がここ数年で目立ってきているように思います。
2000年ころまではあまりニュースにも出てきませんでしたが、21世紀に入ってからは2003年にSARSにはじまり、2009年には新型インフルエンザが話題となり、昨年から続いているエボラ熱もようやく日本では話題にならなくなってきまたために流行から外れたとも言えるように思います。
そもそも近年の感染症はどうして発生し、グローバル感染症と呼ばれるまでになってきているのか、また今後どうなるのか、防ぐ手だてがあるのかなどを日本の玄関口で第一線で長年にわたりご活躍され、感染症がご専門である東京医科大学教授で特攻者医療センター部の長を務められる濱田篤郎先生に講演いただき、伺ってきました。
主催は健康と医療の非営利NPO法人イーマ(日本健康管理促進機構)で、現在は二ヶ月に一度程度のペースで各分野の専門家の先生に一般向けにお話をいただいています。
感染症の歴史:
濱田先生のお話によると、グローバル感染症は14世紀頃の大きな流行がきっかけに始まったようです。
中世の黒死病(ペスト)が流行したのが14世紀だそうで、その際の死者数は全世界で7000万人、ヨーロッパだけでも3500万人にものぼったのだそうです。
現在の人口計算を当時に当てはめた場合にはヨーロッパの当時の人口の約3分の1もの人が亡くなった計算になるとのことでした。
当時を物語る書籍の中には、感染症伝染への恐ろしさのあまり、「妻は夫を捨て、父や母は子供を見放した」様子が描かれており、伝染の手段として当時信じられていたこととして、空気で伝染するとのことや、眼を合わせるだけでも伝染すると信じられていたことからも医師は患者を診た場合においても眼を合わせなかった様子が書かれているようです。
また絵画にも当時のペストの流行の様子が描かれ、家庭の玄関口の扉を開けたところ、周辺にはペストに感染して倒れている人たちの様子がまざまざと描かれているのを拝見しました。
21世紀の感染症:
冒頭にも記載しましたが、21世紀に入ってから今年までに既に3度の感染症が大きな話題になっています。
WHOは20世紀の時点で、21世紀は感染症が発生しない時代になると明確に世界に向けて発信した経緯が残っているのだそうですが、21世紀に入ってわずか15年の間に既にWHOが感染症の緊急事態宣言として伝えているのが、2003年に大流行したSARS、2009年の新型インフルエンザ、アフリカでは2013年から広がり始めたものの世界的に脚光を浴び始めたのは昨年から続いているエボラ熱です。
それにデング熱もつい最近まで騒がれていた感染症の1つに数えられるのではないでしょうか?
感染症が増加している背景と理由:
濱田先生のお話しでは、感染症が世界的に広がりやすくなった背景として容易に考えられることの1つとして、交通機関の発達による人の行き来の多さを挙げられています。
事実として、人の移動がしやすくなり、活発になった日本においても、統計上では7人に1人が毎年海外に行っており、2010年の時点では1800万人を超え、その数は年々増加の一途を辿っていることを考えると感染症との関連もわかりやすいと言えます。
日本だけでなく世界的に同じように人びとが行き来していることからも、感染症が広がっている理由として位置づけしやすいのではないでしょうか。
それ以上に感染症が増加している背景として濱田先生が考えられているのは、世界の人口の大きな増加で、人の行き来よりも感染症を広げるきっかけになっていると説かれています。
19世紀から感染症が抑制できるようになったこと、都市化が進んでいること、人口の一極集中のように一定の地域に多くの人がいることが感染症を広げやすい背景になっているとのことでした。
また昔とは違い、未開発の土地や森林にもどんどん侵入するようになった人類ですが、そのことが感染症を引き起こす原因にもなっているのだそうです。
先進国でも下痢になりやすい理由として、硬水の場合にカルシウムやマグネシウムが多く含まれることが便を柔らかくする作用があり、普段から便秘気味の場合は良いようですが、軟便になりやすいそうです。
便秘薬にもカルシウムとマグネシウムが多く含まれるのも同様の理由からということでした。
感染症の注意と予防:
海外旅行者や勤務者のための海外勤務健康管理センターのセンター長を務められた濱田先生ですが、感染症について私たちが心がけておく注意点と予防についてもお話しくださりました。
まずは感染症の原因になっている多くが旅行をした際に経験をするいわゆる旅行者下痢症で、私たちがもつ菌と異なる菌が特に発展途上国の環境下には多く存在しますが、旅行をする時に特に現地の水や氷、生ものに気をつけておく必要があるとのこと。
火をよく通した食材は菌が死滅しているためにリスクはほとんどないと判断できるといいます。
食品以外では、途上国に多いのが現地の犬に近づいて噛まれることで感染することが多いために注意が必要で、感染症予防の観点からも動物との距離が必要とのことでした。
途上国に旅行を行く際、あるいは現地での生活でも犬に必要以上に近づかないこと、もし噛まれた場合は病院ですぐに狂犬病予防注射を打つことが大切で、狂犬病に感染した犬に噛まれた場合は人体の生命も同様に狂犬病では100%の確率で死んでしまうとのことでした。
また狂犬病に感染した場合は10日程で感染した犬は死ぬのだそうで、人もその後に死ぬために、噛んだ犬が10日以上生きている場合は狂犬病の可能性は低いようです。
食事と動物以外では乾期よりも雨期にはインフルエンザが発生しやすい状況にあるために注意が必要で感染症にも大きく影響をすることがあるとのこと。
場所では水たまりが多い場所や耕司現場も含めて蚊が多い場所から感染症が流行しやすいこともあり、予防として注意をしておくことがお勧めされました。
今後注目される感染症:
今後も今まで以上に人の行き来は便利になり、人口も世界的に増えることが報告されていることからも、感染症も同様に広がりそうです。
既にアフリカでは新たな感染症が発生しており、広がりを見せ始めていることからも、これからは蚊が原因のチクングニア熱が感染症として知られてくる可能性が高いとのことでした。
その場合は関節痛などの症状も出るようで、日本も感染症が広がる地域に含まれていることからも注意と予防に心がけたいものです。
濱田篤郎先生の今回のセミナーに出てくる感染症の注意点や予防点も含めた内容は、同先生の書籍である「新免疫旅行記」に記載されていることからも、興味がある方は参考にしてみてはいかがでしょうか。
情報元:
非営利NPO法人イーマ(日本健康管理促進機構) 第123回例会 平成27年3月27日 18~20:00 新宿区四谷区民センターにて
テーマ:グローバル感染症の脅威