マグネシウム欠乏と心臓や血管
世界の土壌に含むミネラル栄養素：
1992年に世界の指導者が集って開催された第１回地球環境サミットにおいて、この１００年の間に世界規模で土壌のミネラル分が枯渇してきていることが発表され、大きな波紋を呼びました。
北米大陸では８５％のミネラルが１００年の間に失われ、アジアにおいても７６％減少という数字でした。
ミネラル分が少なくなった分、その土壌で育つ私たちが口にする食品に含まれるミネラル栄養素も減っていることを意味し、真摯に受け止める人びとの間で研究や議論が進んでいます。
二大ミネラルの１つで知られるマグネシウムは体内で大きな役割を担っていますが、アメリカの専門家の中には同国の土壌と環境、食事の内容や食環境から推測して、アメリカの成人の９９％はマグネシウム不足である可能性があるとも指摘されました。
今回取り上げる研究はそれとは異なる報告ですが、マグネシウム栄養素と住環境と食環境、それと健康との関わりを含んだ報告です。
マグネシウム欠乏と症状：
アイリーン・バーフォード・メイソン医学博士の報告によると、高血圧や高コレステロール、不整脈や心臓機能の低下などの状態はマグネシウムが欠乏している共通のサインととらえることができると説いています。
身体の潤滑油ともいえる３００以上の体内の酵素が適正に働くためにはマグネシウムが必要で、中にはコレステロールの生産を規制する働きなども含まれることや、二大ミネラル栄養素のもう１つのカルシウムとマグネシウムの相互作用も大きく、細胞内外間の移動にもカルシウムのシフトが必要でマグネシウムの有効量次第でその過程に影響を与えることからも、十分なマグネシウムの栄養素が無い状態では心臓もスムーズにリラックスできない状態にあるとのことです。
高血圧や心臓の違和感や痛み、足のツリ、肩こりやこわばり、背中の違和感、眼の周りの筋肉の引きつりや痙攣、頭痛、慢性疲労、不眠等も体内でのミネラルの量と関係しているとメイソン博士は述べています。
マグネシウム不足になりやすい状態：
私たちの身体は食べたものでできていることから、口にする食品にどれだけのマグネシウムや他の栄養素が含まれているかによって差がでることは当然といえます。
加工食品を多く食べる場合と生鮮野菜や果物などを中心に食べる場合では摂取する栄養素に違いがありますし、そもそもマグネシウムを多く含む海草類やナッツ類、ほうれん草、カボチャの種子などを食べる機会が減っていることも影響しているとメイソン博士は伝えています。
日本でも政府の生活調査報告書を観る限り、この２０年の間だけでも生鮮野菜や果物の一人当たりの年間消費量は右肩下がりに減っており、野菜や果物の代わりに増えているのが加工食品と言え、日本でもアメリカと同じような状況にあることがわかります。
またアメリカで大きな話題を呼んだ「ザ・マグネシウム・ミネラル」の著者であるキャロライン・ディーン医学博士の指摘の中には、野菜を育てる際に、土壌内のマグネシウムを使い切ってしまった時には、同じ土の中には次の農作物を育てる時に、マグネシウムは含まれていないと伝えています。
ストレスとマグネシウム：
ディーン博士はストレスもマグネシウムが欠乏しやすい要因になっていると考えています。
精神的なストレス以外にも運動をすることで汗をかいたりすることでも肉体的なストレスとなり、マグネシウムは消費されることからもラクティック酸をニュートラルな状態にするためにもマグネシウムを補足することをおすすめしています。
メイソン博士は近年多くの人が生鮮野菜や果物の代わり増やしている加工食品摂取による栄養摂取に加えた乏しい血糖コントロール、多いアルコール摂取や投薬など体内でマグネシウムが不足しやすい状況が整っているのが現代と指摘。
そのためにカルシウムとマグネシウムのバランスを保持しながら、食事で補えない場合はサプリメントを活用してでも、もしも多く摂取した場合は下痢になることからも、３〜４日毎に５０mg程度マグネシウムを増やしながら様子を観ることをおすすめしています。
参照：
Burford-Mason A. Orthomolecular medicine and heart health:
Unmasking the magnesium link to multiple risk factors for cardiovascular disease/Orthomol Med. 2013;28(1):9-15.
Available at EBSCO Database Feb. 14, 2014
Dean C Magnesium. El Segundo, CA: Active Interest Media Inc;2011
Carolyn Dean M.D. Book: The Magnesium Miracle
Townsend Letter:May 2014:p27-28
