脳卒中の予防とビタミンDの働き
脳卒中についての専門機関と組織が集う2015年度のアメリカン脳卒中協会の国際会議では脳卒中の前後とその予防に関連するビタミンDとの関連性が報告されました。
ビタミンDというと日本ではあまり重要視されていない栄養素ですが、実は欧米では人気が定着していること、幅広い役割をビタミンDが担っていること、寒い季節は多くの人びとによって摂取されていることなどもあり、研究調査の数も増え続けている1つといえます。
以前には低いビタミンDレベルで脳や脳幹等の主要血管の損傷と神経管傷との関連性についての研究報告がなされた経緯がありましたが、今回も血管とビタミンDとの深い関わりについて報告されています。
今年の脳卒中協会の国際会議での報告の中でも注目される1つにビタミンD値が低い脳卒中患者は、ビタミンD正常値の脳卒中患者よりも、より深刻な状況であることが多い点や後の健康にも影響を与える可能性について言及されています。
体内のビタミンDのレベルが低い場合、多くの人が後に脳卒中に発展する可能性を示す高いリスク要因であることが伝えられました。
アメリカのマサチューセッツ大学メディカルスクールで精神と神経科で教鞭をとるニルス・ヘニンガー教授とその同僚らのグループは今回のようなビタミンDレベルとの関係性を理解しておくことは、脳卒中の高いリスクを持つ患者において、ビタミンD欠乏の際に治療をおこなうべきかどうかの判断を助けることになる報告であると伝えています。
脳卒中とビタミンDの調査:
2013年1月〜2014年1月にアメリカの病院で96名の脳卒中患者に対して、ビタミンDのマーカーともいわれる25ハイドロキシビタミンDが低い場合に深刻な脳卒中および不健康を予期するものになるかの調査が行われました。
正常なビタミンDレベルが体内にある患者と比較すると、全体的にビタミンD値が30ng(ナノグラム)/mL(ミリリットル)以下と定義をした時に、下記のようないくつかの発見があったと記録されています。
1 血流の閉塞の結果、死細胞域が約二倍大きかった。
2 ラクナストローク(小さく入り込んだ脳血管)卒中患者と体内の他の血栓が原因によるラクナストロークとは異なる患者との関係にも似ているといえる。
3 患者の年齢や当初の深刻度にもよるものの、ビタミンD値が10nm/mL減少する毎に、以後3ヶ月以内の健康的なリカバリーの機会が約半分に減る。
今回の研究は小規模だったために確かな結論とするには早すぎると前置きをしながらも、ヘニンガー医学博士らのグループは、患者は医師とビタミンD補完について議論することを推奨すると共に、更にビタミンDと脳卒中の関連性を調査する弾みとなったと報告しています。
また次のステップとして、ビタミンDのサプリメントが脳卒中を守る役割を果たすことができかどうかの調査にも意欲的に取り組んでみたいと説かれています。
ビタミンDは太陽のビタミンとも言われるように、体内では貯めることはできないものの、一日に20分程度において外で太陽を浴びることでビタミンDが体内で合成されることが伝えられている栄養素ですので、気になる場合は日光浴を頻繁に行うことがおすすめです。
参照:
Low VitaminD predict more severe stroke, poor health post-stroke.
American Heart Association.
ScienceDaily, 11 Feb, 2015
www.sciencedaily.com/releases/2015/02/150205083522.htm